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2004年 冬号(第6号)…食についてもう一度考える
アムステルダムにて(撮影:岡村理栄子)
2004年 冬号(第6号)…食についてもう一度考える
食についてもう一度考える
院長 岡村理栄子

すっかり寒い近頃です。お風邪などひいていらっしゃいませんか? SARSもインフルエンザも空気感染よりも、つばなどによる飛沫(ひまつ)感染であることが分かり、マスクや手洗いが効果的といわれています。当院では咳をなさる方にはマスクをして頂いています。受付にお申し出下さい。

さて、寒いと「お鍋が美味しいな」などと思う食いしん坊の私です。しかし、最近はそのお鍋の存在そのものが滅亡しそうな事態となっているようです。外食ですらバイキングが大人気、家でも一人で食べるという個食(孤食?)だけでは無く、同じ食卓に着いても皆が好きなものをバラバラに食べている事が多くなったそうです。それは、手作りのものが減り、外から買ってくるものが多いのでバラバラでも手間がかからないこと、栄養についての知識が無いこと、子供に好き嫌いを注意できないことなどの表われといわれています。

皮膚科ではアレルギー性の皮膚疾患もある為に、当院では皆さんに色々食事についてお尋ねしたり、お話したりしています。意外な病気が意外な食べ物で出ることもあるので重要です。しいたけの生焼けや漬け汁で激しい痒みが出たり、マンゴウや林檎で口の中が腫れてしまったりする人もいます。また、逆に必要以上に制限し過ぎて成長が遅れたり体調不良になっている事もあります。

その時に気づく事は皆さんが、食事についてあまり考えていらっしゃらない事です。先日、日本臨床皮膚科学会の学校保健委員として文部科学省の方とお話しましたが、あまりにもひどい現実に(朝ごはんを食べてこない子が多い、甘い飲み物ばかり飲んで食事をしない子がいる、野菜を全く食べられない子がいる、等)これからは小学生に栄養について教育するそうです。でもそれだけでは無く、他の人と食べればお互い楽しく、「おいしいね」と言い合えばもっと美味しく感じられること、他の人のことを思いやりながら食事をする事も教えてあげる事が大切です。それは、学校ではなく家庭で楽しく教えないといけないと思います。

2005年の学会で「食事と皮膚疾患の関係について」報告する予定で、猛勉強中の私ですが、どうしてもその前に普通の家庭の状態を知り、食事や栄養の偏りが病気の直接の原因ではないが悪化要因になっていないかを常々考えたいと思っています。

あきらめないで 「ふけ」「抜け毛」
lightbulb_outline皮膚のかびを抑えてふけ症を治す!

ふけは頭皮の細胞が生え変わり死んだ細胞が剥がれ落ちるものです。誰にでもあるものですが、量が多かったり、かゆみがあったりするものをふけ症と言い、その多くが「脂漏性湿疹」です。「脂漏性湿疹」は脂漏部位、頭や鼻の周りや胸の皮膚の脂が多くある所にできる湿疹です。男性ホルモンと関係深いといわれ、乳児期(一時的にお母さんのホルモンの影響が出るため)、思春期、壮年期にできやすく、またかなり個人差があります。若いころニキビができた人や、疲れている人が皮膚の脂がいつもより多く出て、その脂を分解する成分でかぶれたり、その脂を栄養として育つカビ(マラセチア、フルフルというかわいい名前で誰の皮膚にもいます)が異常に増えて、そのカビの成分にかぶれたりすることで生じるといわれています。薬を塗れば一回一回は治るのですが、また同じような環境になると出てきます。

普通、湿疹では石鹸は少量でやさしく洗ってもらうのですが、この病気ではしっかり洗う事が大切です。シャンプーも自分に合ったものを選び、しっかり洗い流します。

治療としては痒みをとる為に痒み止めを飲んだり、予防にはビタミンBをとります。炎症が強い時にはステロイドを使いますが、最近頭に塗りやすいローションタイプのカビを殺す薬ができ効果をあげています。この薬は長く使ってもかまわない上に、もう一つ良いことが分かりました。元来、脂漏性湿疹は毛穴が詰まり毛が抜けやすくなることは分かっていたのですが、この薬を塗ることにより抜け毛が劇的に改善した例が報告されたことです。当院でも効果をあげています。