2011年 夏号(第26号)…問診は大切です。くどくどと尋ねることをお許し下さい!
問診は大切です。くどくどと尋ねることをお許し下さい!
毎日暑い日が続いております。ほんの数分歩いても汗が吹き出てきます。東日本大震災の被災者の方々のことを考えると賛沢とは思いますが、この暑さも数年は続くと思われるので対策を考えなくてはなりません。皮膚科にはあせも、虫さされ、とびひなどの患者さんが多く来院されています。また、ニキビの新しい薬ができたので、中学生や高校生の患者さんが増えました。そのために初めて来院される方が増えてきています。
そこで、診察の初めに行う問診を、なぜ行うかを述べたいと思います。当院ではまず初めに問診票を書いていただいています。それにより今回の病気が過去の病気や、現在他に治療中の病気と関連があるか、今現在使用している薬の影響がないかなどを考える基になります。特にアレルギー疾患は数種類の病気が重なることがあるのでしっかりお尋ねしなくてはなりません。
皮膚科が他の科と違うのは、この時点で診察することです。皮膚は目で見えますし(視診)、手で触ることができますので(触診)、それを行い病気の診断をしぼりこみ、その後にまた、問診します。水虫の人にアレルギー歴を尋ねたり、皮膚の腫瘍(癌や脂肪の塊などができている人)で来院された人に、最近食べた物などを尋ねたりすることは必要ないわけです。
ここでよく尋ねることは、
…「ずっと!」や「だいぶ前」では困ります。一人一人の「だいぶ前」が違うのですから。1カ月前も5年前のことも、ずっと前といわれる方がいらっしゃいます。いつからできて、どういう経過をとったかが診断にとても大切です。また、季節の変化で良くなったり悪くなったりする病気もありますので、教えてくだされば助かります。
…どんな薬を使い変わらなかった、良くなった、悪くなった、などは、これからの治療にとても重要な情報です。薬の名が分からなくてもチューブだった。容器に入っていた。という情報でもある程度は類推できます。お薬手帳をお持ちの方は必ず持参下さい。当院から他科の医師会の先生方や調剤薬局に問い合わせることもできます。
…山登りをしました、しいたけをたくさん食べました、汗を一杯かきました、などなど。思わぬことで起きる病気があります。
…特にニキビの患者さんにはより詳しい問診票を用意してあります。日に何回、何を使って顔を洗うか、ニキビを悪化させる食べ物を食べていないかなどを追加してお聞きします。治療には日常生活の改善が大切なのです。
あきらめないで水虫! 治しましょう! 治ります!
水虫の患者さんに問診で「なぜ、今まで治療しなかったのですか?」と質問しますと、「どうせ治らないと思っていたから」という方が圧倒的に多いのに驚かされます。今回は皆様からのご質問に答えることで「水虫は必ず治る」ことをご理解いただきたいと思います。
水虫は人間にカビがついて生じる病気です。ほとんどが白癬菌という真菌(カビ)が皮膚のいろいろなところに付き、そのために赤くなったりかゆみが出たりする病気です。足に生じると水っぽくなり、じくじくするので水虫と言われています。体に付くとたむしといいますし、頭に付くとしらくもといいます。カビですから乾燥に弱く、やはり梅雨時や汗をかく夏に悪化することが多いのです。
しかし、最近では高温多湿の日本なのに靴を履き続けるので季節は関係なくなっていますし、女性も仕事をする方が増えたためか患者さんは多くなっています。またこの菌は、靴下の繊維の目の間は通ることできませんが、ストッキングの網目は通りますので女性同士の感染も多くあります。
もちろんです。良く効く薬もいっぱいあります。カどの成長を阻止したり細胞膜を破壊したりと抗真菌剤は何種類もあります。ただ、皆さんが辛抱強く塗って下さらないことが多いために治りづらいのです。ポイントは自分が患部と思っているところだけでなく広めに塗ることです。カビが付着していても、まだ発病していない部位にも塗ると治りが良いのです。症状がなくなったように見えても、がんこな白癬菌は皮膚の中で生きています。自分の判断で薬を止めないで3カ月は塗り続けましょう。皮膚は約1カ月で生まれ変わるのですが、手のひらと足の裏は(よく見てください!色も厚さも他の皮膚と違いますよね)生まれ変わるのに3カ月ほどかかるため、しっかりと新しい皮膚ができるまで塗れば安心です。
また、生活上の注意も大切です。
…家族にうつすとせっかく自分が治っても、また自分にうつります。足拭きマットやスリッパの共有を止め、絨毯や畳は掃除機でまめに掃除しましょう。
…石鹸でよく洗う。特に足のまたは忘れがちです。丁寧に洗いタオルでしっかり一本一本の足指、足のまたも拭き乾燥させましょう! そうすると他の場所(温泉やサウナなど)で菌が付いてしまっても、ふき取ってしまえば発病しないのです。
…靴もしっかり乾燥させましょう。毎日同じ靴は履かずに代わるがわる履くと、菌がいなくなります。仕事場でスリッパが履けないならお休み時間だけでも靴を脱ぐと、靴内の湿度や温度が低くなり発病を予防できます。
…先に述べたような治療をすれば本当の水虫なら治らないことはありません。しかし、自分が水虫だといって来院する人の中には、別の病気の人が少なくはないのです。水ぶくれとかゆみで水虫と決めつけて「薬を塗っても効かない。効かない」と思っている人が多くいるのです。水虫ではないので水虫の薬が効くわけもなく、そういう人が「水虫は治らない」と決め付けるので、本当の水虫の人もそれを聞き、なおさら治療をする気がなくなるのです。足には種々の湿疹もありますし、掌せき膿庖症という難治な病気もあります。
皮膚や爪の一部を少し採って顕微鏡で見て糸状の菌がいるかを見ます。数分で結果が分かります。浅くしか採りませんので痛い検査でもありません。
そうです。長い間水虫を放っておくと爪に入り、爪がポロポロしたり、黄色くなったりします。もちろん、爪ですので痒くも痛くもなく気付くのが遅くなります。せっかく、足水虫を治しても毎年暑くなると爪から菌が出てきて足にも毎年出てしまいます。
塗る薬では成分が爪の内部まで浸透しないので効果が少なく困っていましたが、最近は良い飲み薬ができて皆さん治るようになりました。爪の伸びは1日0.1ミリなので、すっかり生え変わるまで6カ月ほどかかりますが、毎年の悩みから永遠にさよならできると大好評です。ただ、飲み合わせのある薬や肝機能が悪いと飲めないことがありますので、早めに、高齢にならないうちに治すことをお勧めしますし、せっかく塗る良い薬もできているのですから、足水虫が爪に入る前にしっかり治したいものです。