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2007年 冬号(第15号)…あけましておめでとうございます
フィレンツェにて  (撮影:岡村理栄子)
2007年 冬号(第15号)…あけましておめでとうございます
新年あけまして おめでとうございます
院長 岡村理栄子

平成19年の新春を迎え、皆様いかがお過ごしでしょうか?

さて、昨年は子供たちの虐待死、自殺等の問題が多発し日々の報道に目を覆うばかりでした。「今の子が悪い、親が悪い、社会が悪い」というのは簡単ですが、この社会を作っている大人の一人であることに気付くと、いてもたってもいられない気がします。特に私ども医療従事者は社会に貢献し積極的に参加しなくてはいけないと思い身が引き締まる思いです。

昨年の新聞報道によりますと、東京都内の15歳の少女が美容整形で漏斗胸の治療として、胸を大きくする脂肪注入の手術を受け麻酔の事故で亡くなったとのこと。少女は常に中学校に行く時も胸を目立たないようしており、丁度高校の入学式に間に合うようにご両親と受診したそうです。私はこの事件に深く動揺し、また奮い立ちました。それは学校医の大切さがまた認識されたからです。今回も本人またはご両親が養護の先生に相談されたら、学校医に相談されたら、そこから胸部外科等の専門医に相談が行き正しい治療が行われ、また事故などがあっても対応できる設備のある病院に行けば、尊い命が救えたのではないかと思います。ご両親は「自分たちが無知であったから」と反省されていますが、今の親に当たる方々もきちんと保健の授業を受けていず、また、学校医というと検診する医者としてしか認識がないのです。学校でしっかりと健康、病気のことを教えて、学校での検診がいかに大切かを知らせると同時に、校医による健康教育を行い病気になったら医師に相談するという基本的なことを知って貰いたいと考えました。そのような活動が学校医をより身近な医師として考えてもらえる第一歩と思います。

私は束京都の皮膚科の学校医代表として講演会等を行ったり、委員会に参加したりしております。子育ても終わり久しぶりに学校に行き厳しい現実を知りました。早く、皮膚科の学校医制度ができるように今年も活動していこうと思っています。

皆様の御理解、御協力をなお一層お願い致します。

皮膚のカサカサにご用心!…乾燥性の皮膚炎を予防するには

かゆみとは、思わずポリポリとひっかきたくなるような不快感を伴う皮膚に特有な感覚です。その原因は種々様々ですが、毒麻疹や内臓の病気などの体の内部からのもの、湿疹等の皮膚固有のものがあります。秋から冬にかけては多くみられるのは、乾燥を原因とした湿疹や乾燥によるアトピー性皮膚炎の悪化です。

人の全身は皮膚におおわれており、一番外の薄い膜を角質層といいます。その外側をさらに皮脂腺から分泌される皮脂や汗が混ぎり合い皮脂膜というものをつくり、それが皮膚をつつみ外部の刺激や水分の蒸発等を防いでいます。

ところが、冬になりますと、その皮膚を潤してカバーしてくれている皮脂膜を作る皮脂腺の働きが悪くなる上に、空気が乾燥して皮膚の水分が失われてしまいます。そのために、皮膚の表面が鱗状にひび割れてはげてしまったりします。そういう状況になりますとあわてた皮膚が不完全な皮膚を作ったり、神経の末端が伸びてきて皮膚の表面に近くなったり、かゆみや炎症が生じることとなります。初めは乾皮症といい保湿剤のみでよいのですが、炎症が強くなるとステロイド軟膏が必要となります。早めの受診をお勧めしますが、そうならないように日常生活にも気を付けて頂けたらと思います。

◆ 患者さんからの質問 ◆
help_outline かゆいからごしごししたくなりますが、なにを使って洗えばよいでしょうか?

固形石鹸とやわらかいタオルをお使い下さい。どんなに皮膚に良いとの宣伝の液体石鹸でも、皆さん使いすぎてしまいます。固形を5回強くタオルに擦り付ける量が一押しの液体石鹸と言われています。石鹸も足先や股、わきの下に使うくらいの気持ちで。

ただ、シャンプーはもっと洗浄力が強いものですから、頭を洗った後は必ず頚や肩などは石鹸を使い洗い流して下さい。

ナイロンタオルの垢すりなどは絶対に使用しないで下さい。使うことにより皮膚が硬くなり黒ずんでしまいます。

また、熱いお湯に入りますとばさばさになりますし、かゆみが増します。気をつけましょう。

help_outline食べ物は関係しますか?

いいえ、いくら油っぽいものを食べても油っぼくはなりません。ただ、炎症がひどい時はうんと辛いものやお酒を飲むと悪化することはあります。卵や牛乳はもちろん全く関係ありません。

help_outline家中のものがそうなのですがうつるのでしょうか?

いいえ、湿疹ですからうつりません。でも皆さんがそうなっていると言うなら家の空気の加湿を考えた方がよいのでは。東京のこの地域は海に遠い上、川が暗渠になってしまい蒸発する水が無いので、とても乾燥しているのです。

でも、この病気は皮膚の薄い子供たちや皮脂腺の働きが元々弱いお年寄りに多いので、加湿器を置くときは気をつけてください。子供たちは、よくつまずいたり触ったりして、やけどをします。部屋に洗濯物を干したり、寝る前に濡れたタオルを干したりしてみたらどうでしょうか。

help_outline着るものでもかゆみが違う気がしますが。

そうですね、ナイロンや羊毛を直接着ると刺激になります。柔らかい木綿や絹が良く、特にシーツやとっくり型のセーターに気をつけてください。電気毛布もちりちりと痒いとおっしゃる方もいますので、高湿で長い時間使わないようにして下さい。