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2008年 冬号(第18号)…もうすぐ春です
東尋坊(撮影:岡村理栄子)
2008年 冬号(第18号)…もうすぐ春です
もうすぐ春です
院長 岡村理栄子

寒い日が続いていますが、梅の芽がふくらみ確実に春が近づいてきました。春は新しい生活、環境になる方々もいて不安もありますが、心新たになりなんだか暖かくなるだけでも楽しく待たれる季節です。皆様はいかがでしょうか?

さて、新学期を迎え当院も新入生や転勤で東京にいらした方などで、初めてお会いする患者さんが増える時期です。そこで、診察の初めに問診をなぜ行うか述べたいと思います。

当院ではまず初めに問診表を書いて頂いています。それにより今度かかった病気が過去の病気や今治療中の病気と関連があるか、今使用している薬の影響がないかなどを考える基とします。特にアレルギー疾患は、数種類の病気が重なることがあるのでしっかり尋ねなくてはなりません。

皮膚科が他の科と違うのは、この時点で診察することです。皮膚は目で見えますし(視診)、手で触ることができるので(触診)それを行い、病気の診断を絞り込み、その後に又色々必要なことをお尋ねいたします(問診)。水虫の人にアレルギー歴を聞いたりするよりは日々の足の環境を尋ねることが大切だったり、皮膚の腫瘍(癌や脂肪の固まりなどができている方に)で来院された人に、最近食べた物などを尋たりすることは必要ないわけです。

ここでよく皆様に尋ねることは

「いつからできましたか?」です。「ずっと!」や「だいぶ前」では困ります。1人1人の「だいぶ前」が違うのですから。1ヵ月前も5年前のことも「ずっと前」と言われる方がいらっしゃいます。何時からできて、どういう経過をとったかが診断にとても大切です。また、季節の変化で良くなったり悪くなったりする病気もありますので、それも教えて下されば診断に役立ちます。
「いままでの治療は?」…どんな薬を使い変わらなかった、良くなった、悪くなった。これからの治療にとても重要な情報です。薬の名がわからなくてもチューブ入りだった。容器に入っていた、だけでもある程度は類推できます。
「何かいつもと違うことをされませんでしたか?」…山登りをした。植木の手入れをした。庭に毛虫がいた。しいたけをたくさん食べました。汗を一杯かきました、などなど。思わぬことで起きる病気があります。

このように問診は大切です。そのために、もしも答えに因って適当に答えられると逆に間違いの原因になったりします。はっきりしないのなら「忘れた、覚えていない」などと言って下さい。そこでその期間は「あまり覚えていないくらいひどくはなかったのか」などとも推理もできます。

問診でくどくどと質問すると、まるで今までのことを責められているように感じられたり、「あの時にこうすればよかった」などと過去のことを思いだされて、私が尋ねることで嫌な思いをされる方もいらっしゃると思います。私も大病をしていますので気持ちはわかるのですが、これからの治療のためですのでよろしくお願いします。

問診も大切な診察であることを知って、くどくどと尋ねることをお許し下さい!

気をつけて! スギ花粉皮膚炎と口腔アレルギー症候群

春でいやな事はスギ花粉症です。今年はスギ花粉が沢山飛散するという予報が出されています。

花粉による皮膚炎は、初めは鼻水や涙のためのかぶれが主でしたが、最近では直接花粉が付いた皮膚がアレルギー反応を生じて赤くなったり、かゆくなったりすることがわかりました。また、もともとアトピー性皮膚炎の患者さんは花粉が鼻や目に付く以外にも、皮膚に付いても全体が悪化することが多いこともわかっています。

そして、残念なことに昨年は大丈夫だからと言っても今回が大丈夫とは限りません。1人1人のアレルギーの許容量は決まっていると言われ、よくコップに例えられます。つまり、小さいコップの人はスギ花粉を吸い始めて5年程で水が溢れ出てしまい(許容量を超えると)、それ以降毎年アレルギーが起こります。大きいコップの人は何年でも大丈夫なのです。しかし、人れる水が少なければ水が溢れることが少なくなるので、なるべく花粉は吸わないほうが良いと考えます。

多くのスギは私と同じ位の年齢で(終戦直後に植林された)、成熟して花粉を飛ばすようになってから30年くらい経ちました。その為に私より上の年齢の方や私達は、ほぼ同時に花粉症を発病し(吸った期間が同じのために)、一時は中年の病気とまで言われていました。しかし、今の子ども達は生まれた時からスギの花粉が飛んでくるので、すぐに許容量を超えてしまい発病する子が多くみられるようになりました。お子さんの鼻がぐじゅぐじゅしたり、顔が赤くなったりしたら、その日の花粉情報を見て下さい。度々重なるようですと疑わしいと考えられます。心配なら血液検査などで推定しましょう。花粉症の子ども達は学校での体育やクラブ活動で悪化することがあり、どう配慮するかが問題となっています。

皮膚科ではもちろん、スギやブタクサなどが起こす皮膚炎やアトピー性皮膚炎の治療にも熱心ですが、花粉症の人は果物によるアレルギーでひどい尋麻疹となる例が多くあり、それも研究されています。スギはキウイ、パイナップル、トマト等でブタクサはスイカ、メロン等のウリ科等で、シラカンパはリンゴ、梅等のバラ科、キウイ、セロリ、胡桃等、ヨモギはジャガイモ、トマト等のナス科や香辛料が多く、また口から入れるもので生じ、口の中(口腔)ですぐ発病するので、「口腔アレルギー症候群」と言われています。花粉症の方はご注意を!

治療は他のアレルギー疾患と同じく抗アレルギー剤の内服や外用薬です。抗アレルギー剤は人により口が乾いたり、眠気があり飲めずに我慢する方もいらっしゃいます。最近では脳内には入らず、それにより全く眠気が生じない薬や子ども用の錠剤もできて楽になってきています。それでも一番よいのはなるべく体内や皮膚の表面に花粉を付けないことです。あまりにも花粉の飛散が多い日には外での運動や洗濯物を干さないようにし、眼鏡をかけて下さい(目から鼻に抜けていく花粉が多い!)。サイズが合ったマスクをして下さい!そして、家の中に花粉を持ち込まないように外では帽子を被り(髪の毛に付き易い)その帽子は玄関に置く、花粉症の人も違う人も玄関で花粉を払い落としてコートを脱ぐなどと工夫して下さい。

早くスギが年をとり花粉が飛ばないようになることと、花粉をあまり作らないスギの品種改良が望まれます。最近はただでさえ子ども達が外で遊べるような環境が悪くなり(遊ぶところがない!事故、事件が多い!)、体力が落ちてきて心配です。遊びたいのに遊べないのです。外で遊べないからゲームをしてしまい、ますます体力や運動能力が落ちてしまいます。植林する時はそんなことは考えずに防災や未来の子ども達のためにと思ってして下さっただろうに残念なことです。