arrow_upward
menu
2008年 春号(第19号)…皮膚科医も学校保健活動を行っています
京都 金閣寺(撮影:岡村理栄子)
2008年 春号(第19号)…皮膚科医も学校保健活動を行っています
皮膚科医も学校保健活動を行っています
院長 岡村理栄子

新緑の季節となり空も青くすがすがしいですね。しかし、最近は屋外で活動をしたいと思っていても子ども達には様々な問題が起きた為に、なかなか外で自由に遊ぶということができなくなっています。住環境の悪化は空き地が少ないこと、危険物も一杯あること、自動車も多いことで代表され、社会的にも今までには考えられない事件が起きて、知らない人どころか知っている人にまで気を付けなくてはいけないようになりました。また、子どもが危ないことをしていても他人が親身に注意してくれなくなっている状況もあり、子どもの一人での外出も難しくなっています。そのために、学校や幼稚園での体育や散歩が大切に感じられます。

しかし、人間環境ばかりではなく、地球規模ではオゾン層の破壊による紫外線の質と量が変化し、子ども達の若く、幼い細胞に大きな影響があります。今は紫外線を急に浴びることでなる赤くなったり火傷のようになったりすることを、学校でも保護者の方々も気を付けています。しかし、それだけでなくゆっくりと生じる慢性の影響のほうが大きく、30年後50年後の今の子ども達への影響は未知です。しかし、このままの状況で進むと紫外線による皮膚のがんは確実に増えていくことが予想されます。「若い時、幼い時に浴びた紫外線の害が高齢になり生じてしまう。それも若い時のほうがダメージは大きい」このことの認識は、学校の関係者にはあまりないと思います。

数年前からは母子手帳から「日光浴の勧め」がなくなり、今の保讃者の方々は紫外線や日焼け止めについて知識が豊富です。問題はその上の年代の方で日焼け止めは美容だけのためと考えられて「自分はもういい。子どもには早い!」と考えたり、「元気が一番。真っ黒に焼けたほうがビタミンDが増えて、風邪を引かない」と考えたりされています。一日に必要なビタミンDは紫外線にほんの10分程浴びれば十分得られますし、現在は食物でも十分とれます。元気に外で遊び、十分睡眠をとる。本当に子ども達には成長と心にとって大切なことです。それならば、しっかりした知識を持ち、十分に紫外線を防御して外で体を動かすようにしたら良いと考えます。特に子ども達が大半を過ごす学校での防御が大切だと考えられます。

先日私は、日本皮膚科学会で「学校保健に皮膚科医はどう貢献するか」という題で、教育講演を若い皮膚科医の先生方に行いました。現在私が行っている小、中、高校での講演、授業の内容と、どうしてそれが必要かをお話ししました。他の科もそうですが、特に皮膚科は自分で健康管理をし、病気になる前に予防できることが多いので、子ども達に「皮膚の仕組み、働き、その皮膚を守る方法」を教えることは皮膚科医の大切な仕事です。しかし、今の文部科学省が決めている学校医には皮膚科は入っていないために独自の活動を行っています。

学校で、子ども向け、保護者向けに、アトピー性皮膚炎、おしゃれによる障害、紫外線の害、伝染病等についての講演を行い、それとともになるべく子ども達と話をして何を子ども達が知りたいかを教えてもらい、次の活動に役立てています。

また、今回の学校保健で問題になったのは、「学校のプールで日焼け止めを使うと水が汚れるからだめだ」という意見で、それに対して、実際に学校で水を調査して「決してそんなことはない」ことを証明しました。このような、科学的に反論し、よく話し合い学校の先生方、養護の先生方、保護者の方々とより正しい知識を共有し、子ども達の役に立てたらと多くの皮膚科医が考え、私も元気に活動をしています。